ドゴンに関することで、もっとも有名なのは間違いなく マスクダンス だ。 人や動物をモチーフにした仮面をかぶって踊るこのダンス、ドゴンの世界観や宗教的な面を知るには非常に良い機会なのだ。 しかし、このマスクダンスは、本来なら宗教的儀式、葬式など、もしくは4~6月頃に行われる儀礼祭の時にしか披露されないのだそうだ。
とはいえ、ここまでやって来て、このマスクダンスを見ない話はないのだ。 このダンスそのものが、世界で唯一ここだけのものということもあるし、今そこにそのダンスを見る機会があるのだ、、、 これを逃す手はないのだ。 しかし、そうは言っても、このダンスはやはり宗教的な儀式の為にそう簡単には見れないとされている。 去年ここドゴンを訪れた人の話によると、去年は第一回目の「 大マスクダンス大会 」が催されたそうだ。 その話を聞いていた僕は、ちょうど去年のその頃と同じ時期を見計らってここまでやって来ていたのだ。 が、しかし、そんな虫の良い話はなかった、、、 そして、どうしたのか? 実は僕は、ドゴンの国に来る前から、モプティの街中で出会うドゴン・トレッキングのガイドに話を聞いていたのだ。 一目で良いから見てみたいという思いが、僕を動かし、それを現実に可能にさせる事が出来たのだ。 もっとも、そこまで難しい話は無く、ただ単にお願いすれば良いのである。 そう、お金を払って、そのマスクダンスをアレンジしてもらうことになったのだ、、、 もっとも、現在ではそうやって収入を得ている村もあるそうだ。 定期的に訪れる団体観光客の為に、村では必要に応じて歌い手たちと、楽器を演奏する者たちと、そしてマスクダンサーたちを集めるようだ。 総勢40名近くの男たちが、こうしてマスクダンスを披露してくれるのである。 始めは腑に落ちない部分もあったが、このダンスが見れるのは世界で唯一ここだけという事実と、それが今目の前で可能だということを思うと、少し高く思われた金額も結局は許容範囲以内という風に自分に納得させた。 辺りに散らばる大きな岩の間や上を乗り越えるようにして断崖の方へと登って行くと、そこには少し大きな広場があった。 先程の村人に知らせる太鼓の音のお陰で、そこにはたくさんの子供たちも見物客として集まっていた。 広場の真ん中には、背の高い木があって、その木下には太鼓の奏者たちが待機している。 そのすぐ傍には、あの年配者たちが集まる寄り合い所があり、その間には20人程の歌い手である爺ちゃんたちが並んで座っている。 それ以外には他に何も見えなかった。 広場に差し込む太陽の光が強い為に、僕は少し離れた場所で待機するように待っていた。 そして、、、 太鼓の音と共に、突然マスクをかぶったたくさんの人間が現れた。 太鼓の奏でるシンプルでありながら、奇妙で、不思議な音色と、爺様たちの声がうっすらと聞こえてくる。 ダンサーたちは、その音に合わせて踊り、木の周りを円を描きながら練り歩き始めた。 「 これがそうなのかっ! 」とそう興奮しだした時には、僕はもうあれほど嫌だったキツい日差しの下にいた。 あれほど見たかったマスクダンスなのだから、その行動は後で自分で振り返って考えてみても分かる話だ。 僕の興奮を知るか、知らざるか、マスクをかぶったダンサーたちは、尚も円を描きながら僕の目の前を練り歩き、中には僕を威嚇するかのような視線を投げかけ、そして口々に何かを叫んだりしていた。 僕はもう夢中でカメラのシャッターを切っていた。 しばらくして、太鼓の音色が変わると、今度はそれぞれのマスクダンサーが、それぞれの踊りを披露していく、、、 もちろん唯一のマスクもあるし、何人かが同じマスクをかぶっていることもある。 中には、竹馬のような背の高い棒の上に乗っている者、首が折れてしまいそうなほど重そうなマスクをかぶった者、手に鎌のような武器を手にしている者、団扇のようなものを持っている者、動物のマスクをかぶっている者、不思議な形をした飾りを頭の上に載っけている者、、、 実に様々なマスクがそこにはあり、その一人一人がダンスを披露してくれた。 ダンスそのものは、そのかぶっているマスクの意味合いを含んでいる。 動物を表しているマスクは、それなりの動きを。 女と子供を追い払う役目のマスクは、それらしい激しくて凶暴な踊りを。 また、天と地と世界を表しているというマスクは、またそれらしい踊りを披露してくれた。 踊りが一通り披露されると、今度はそのマスクの意味や背景にある簡単な話をしてくれた。 それぞれのマスクには、それぞれの世界観や観念、また役目などがあって、実に興味深いものではあった。 一歩間違えば、幼稚園のお遊戯会にもなりかねないマスクダンスではあるが、その意味合いを知る事で、ドゴンの人々の信じる何かに触れることが出来たような気がした。 僕の見たマスクダンスは、あくまで観光客用なのだが、それでも僕は充分満足していた。 元々、今の世の中では、一旅行者にとって、ほとんどの宗教的儀礼や踊りを自然そのままの形で目にする事は出来ない。 もっとも、その時期が来るまで待っている事が出来る者や、それに合わせてやって来れる者には別の話だが。 それでも、こうやってお金を払って彼らドゴンの文化の一端を目にする事が出来たのは良いことだと僕は思う。 それに、お金を払う事によって、彼らに収入が入るのだから、その面でも良いとも思った。 特に、か細いながらも歌い手をやっていた爺様たちの中には、既に目の見えない者や、手足の動かない者、それに歯のない者もたくさんいた。 彼らが僕に分けてくれた モノ に対して、僕が彼らに分けた モノ がそういう風に活用されるのなら、この観光客向けに披露されるダンスも決して悪いものではないと思った。 Copyright (C) HITOSHI KITAMURA All Rights Reserved.
by hitoshi280477
| 2006-02-08 16:52
| Mali
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