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Ghana vol.2 「 歩くサファリ@モーレ国立公園 」

 「 動物が見たい、、、 」 アフリカの旅を初めて以来、心の中で何かが欠けているような気がしてならなかった。 もちろん、ここまでの道中いろいろと大変なこともあったが、それなりに楽しんでいて、満足もしていた。 ただ、アフリカを旅しているというのには、決定的な何かが欠けていた様な気がしてならなかった。

 北アフリカの玄関口であるモロッコから、サハラに埋もれるモーリタニアを通り、そしてブラック・アフリカであるセネガル、西アフリカ随一の観光地であるマリ、、、 そしてここガーナとやって来ているわけだ。 サハラを越え、ブラック・アフリカに入り、広大な大地や、辺りに点在するバオバブの木々、大きな夕陽など、時を変え場所を変え、目にしていたものの、やはり何かが足りなかった、、、



 「 ど・う・ぶ・つ 」



 そうだ、動物なのだっ! アフリカに来て、この広大な大地に生きる野生の動物を見ない事には、アフリカの旅も旅らしくはないのだ。 もちろんそんな定義はなく、それは僕の勝手な判断だ。 しかし、アフリカにやって来る者ならば、誰しも野生の動物を見てみたいものだろう?

 いやいや、他の人のことは置いといて、僕は動物が見たいのだ。 そう思うと、その「 動物を見たい 」という感情を押さえきれず、日々その思いは募るのであった。 そして、もう動物みたいな人間を見るのには飽きたのだ、、、

 終いには、いつからか「 ど・う・ぶ・つ、ど・う・ぶ・つ、ど・う・ぶ・つ、、、 」と呟き、念じ始めていたことと思う。





 砂埃の舞う道を走る事、数時間。 目的地である「 モーレ国立公園 」に到着した。 既に辺りは暗くて、園内がどうなっているのかは分からなかった。 入場料が格安の25000セディ(=約330円)だったので、道中西日のせいで暑かったこと、汗と砂にまみれたこと、そしてバックパックが段ボール詰めされた冷凍魚たちと一緒だったことは良しとしよう。

 荷物を部屋に降ろしてレストランに向うと、そこではイノシシの親子が歩いていた。 向こうは暗闇でも見えるし、ここに住んでいるのだから普通なのだろうが、こちらはその平然と歩くイノシシの親子の様子に驚いた。 それが、園内での最初の出来事であった。 どうやら人間と動物の距離は近いようだ、、、





 夜も明けた頃から、身支度をして部屋を出た。 というのも、ここでは「 Walking Safari 」という、実際に野生の動物たちが棲息する所を歩くことが出来るのだ。 今までに聞いていた話では、普通サファリというのは、いろんな理由から、サファリ・カーという特別に改造された4WD車で行くらしいのだが、それがここでは歩くことが出来るのだ。 そして、その歩くサファリは朝7時に出発するとのことだったので、早起きをきめこんで出て来たのだった。

 数人の参加者が集まったところで、いざ出発となった。 こちらはもう興奮して、昨晩でさえもワクワクドキドキしながら寝たくらいなのだ。 楽しみだ。 早く動物が見たい。


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 ロッジは崖の上にあるので、そこから少しずつ崖下を目指して降りていく。 まだ朝とはいえ、もう日差しがキツかった。 崖上から見る景色の印象は、緑が多く、大地が平坦ということ。 まだ肉眼では如何なる動物も見えなかった。

 とりあえず緑の合間を歩く事自体、気分が良い。

 少し乾いた地面なので、少々歩きづらいが、逆にいえばそれがこの歩くサファリの醍醐味なのだ。 野生に住む動物たちと、僅かながらその感覚を共有していると思うと、既に気分は上々だった。 辺りで鳴く鳥の声がまた心地良いのだが、茂みで何者かがガサゴソと音をたてると、ついそちらに意識がいってしまい、またある種の緊張を胸に抱いたまま歩を進めることになる。


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 しばし歩いた後、最初に目にした動物はどうやら鹿の仲間のようだ。 草食動物なので、もの静かにちょこんと草地に座っていた。 雄なので、立派な角を従えていた。 こちらの行動には目もくれなかったが、レンジャー曰く、彼らの領域を侵してはならないのだ。 もし僕らが彼らの領域、つまり接触限界線に踏み込んでしまうと、向こうは逃げてしまうのだ。 そうすると、全てがパーなわけだ。 そして、野生に住む彼らに心理的抑圧を加えてしまい、最終的には彼らの生態系を変えてしまいかねない。 というわけで、「 彼らの領域を侵さない 」、それがこの歩くサファリの守るべきルールでもある。

 その後に出会ったのはきっと雌だ。 角も無いし、先程の雄に比べて、もっとおしとやかな目をしていた。 草食動物特有の優しい感じのする目だ。 こちらもおとなしくて、その目つきから、こっちを警戒しているようでも、観察しているようでもあった。



 またしばらく歩くと、足下には人間の足跡のような何者かの足跡が見え始めた。 そんなことに興奮を覚えつつも進むと、突如前方に大群の猿が見えた。 家族同士が固まって、大群を引き連れて歩いている。 大小合わせて、約50匹はいるだろう。 聞けば猿ではなく、「 ヒヒ 」なのだそうだ。

 こちらの様子に気付いたのか、何なのか? 彼らは一斉に動き始めた。 その様子、正に獣が野を駆けている。 しかもかなり速くて、とても人間の足では追いつかない。 もっとも彼らは手と足を使っているのだから、二足歩行の人間よりは速いのかも?

 ザザザーッ と、木々の間や枯れ葉の上を走る音が聞こえてくる。 聞こえてきたと思ったら、彼らは既に遥か遠くに遠ざかっていってしまった。 辺りの茂みに隠れてしまい、肉眼ではもう見ることは出来なかった。 彼らの走る速さに、僕はあっけにとられてしまった、、、


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 溜め池に出た。 見上げれば、そこにはロッジのレストランが見える。 つまりロッジとそのレストランは、崖上からこの溜め池を見下ろせる絶好の位置に軒を構えているのである。 この溜め池が自然のものなのか、人工のものなのかを聞き忘れたが、まあ自然のものってことは無いだろう。

 そこには象が水浴びに来ていた。 アフリカ象だ。 もう何度も見たことがあるから、「 夢にまで見た、、、 」というのは嘘になるが、それでも初めて見るアフリカ象は大きかった。 今までアジアで見た象よりも大きく感じられた。

 池の周りにはたくさんの木々があって、それがどうやら象の好物でもあるらしく、辺りにいる間にどんどんと集まってきた。 大きくて、黒くて、立派な牙を持つ象たちだ。 それらが、力任せに バリバリッ と草木を引っ張っては、なぎ倒していた。 その迫力といったら、、、





 その他にも、鳥やクロコダイル、それにイノシシなんかにも出会った。 ただ、ここで見た動物の中で、一番印象深かくなったのは、アフリカ象を差し置いて、ヒヒ だろう。

 初めて見た時から、何だか面白い生き物だとは思っていたが、歩くサファリ終了後に見かけた彼らの行動は僕にはかなり鮮烈に映った。 というのも、人間以外の生き物で、ここまで頭の良い動物を、僕は実際に目にしたことが無かったのだっ!





 ロッジの辺りにはたくさんのヒヒがうろついているのは知っていた。 なので、その様子を写真に残さんと思い、僕は彼らの後を付け回していたのだった。 やはり手と足の両方で歩く彼らをつけることは容易ではなく、少し先回りをしないと彼らの姿を目にすることは出来なかった。

 そんな中で目撃したことといえば、、、

 ゴミ箱を漁るヒヒと、高さ5mはあろう水タンクから水を飲むヒヒ、そして木陰で休むヒヒたちだ。



 ゴミ箱を漁るヒヒは、それは人間のようでもあった。 というのも、ロッジの部屋の外に置いてあるゴミ箱の一つ一つを点検するように、その一つ一つの蓋を開けては中を確認し、中に何も無ければ次のゴミ箱を見に行っているのだ! ちゃんと蓋を開けることもすごいが、それから中をちゃんと目で確認する様子は、まるで人間のようでもあった。 思わず感心してしまった。

 ポリタンクの水を飲むヒヒは、高さ5mはあるであろう台座を軽々と登って行く。 そして、頂上であるタンクの上から、悠々と水を飲んでいるのだ。 蓋をしない人間も悪いが、そこに水があることを知っているヒヒもすごいと思った。

 木陰で休むヒヒは、どこかリラックスした表情をしていて可愛かった。 その辺の草木をバリバリとやるのはやはり動物だが(アフリカ人もよく枝を噛んでいるが、、、)、その様子がそれらしくて良かった。 やはり動物なのだから、動物らしくしていて欲しい。



 しかし、その後に衝撃的な事件が起こった。



 それは、僕が観察していたヒヒの様子を、他の人に話そうとレストランに行った時だった。 レストランはオープンスペースになっていて、真ん中にプールがあり、すぐ傍に崖があるが、柵はない。 その為、よくヒヒが辺りをうろついているのは知っていた。

 突然、キッチンの方で声があがったと思ったら、一匹の大きなヒヒが手に何かを抱えてプールサイドに走ってくる。 最初は何が何だか分からなかったが、彼の手に持つ何かを良く見て、思わず吹き出してしまった。

 手にはケチャップ・ボトルが握られていたのだ!



 そこまではまだ良かったのだ。 ねじ込み式の蓋の付いているボトルなのだから、そう簡単には開けることが出来ない筈だ。 ましてや、その中身であるケチャップなんか知りもしない筈だろう? 僕はそう思っていた、、、

 ところが、そこで彼は僕を含む辺りの観衆の度肝を抜いた。 なんと口で蓋を開けてしまったのだっ!! そして、おもむろにボトルの先端からケチャップを舐めているではないかっ!? しかも、「  そのくらい知ってるよっ 」とでも言いたげな顔をしているように見える。



 僕らは皆唖然としていた。 もちろん、「 もしかしたら、、、 」とは思っていたものの、実際その様子を目の当たりにするとはほとんどの人が思っていなかっただろう。 しかし、目の前でヒヒが美味しそうにケチャップを舐めているのを見れば、何も言うことが出来ないのだった。



 それは衝撃的な出来事だった。

 まさかヒヒがそこまで頭が良いとは知らなかった。 辺りにいる人全員を驚かせ、そして動物が人間に言わしめた、、、 「 頭が良い 」と。
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 結局、まる一日という短い時間しか費やすことが出来なかったが、それでもここモーレ国立公園での滞在は有意義なものになった。 野生の動物をサファリで見るということは、どうしても東アフリカが有名なのだが、ここ西アフリカでも同じようにアフリカの大地に生きる動物たちを見ることが出来るのだ。

 わざわざ埃まみれになりながらもやって来て良かった。

 ちなみに、歩くサファリは2時間で一人につき15000セディ(=約200円)。 ガイドであるレンジャーにチップをあげても300円ちょっとだった。 実際、それが一番衝撃的なことではあった、、、






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by hitoshi280477 | 2006-02-24 18:56 | Ghana
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