メキシコ・シティより南へバスで7時間、オアハカという街にやって来た。
久しぶりのバスの旅、心浮かれるものはあるものの、疲れなのか時差ぼけなのか、、、 ほとんど寝て過ごしてしまった。 それでも、目を開く度に目にするメキシコ南部の世界は魅力的に映った。 僕はもっと荒涼としていて広大な風景を想像していたのだが、実際は起伏がそれなりにあってその分緑も豊富なのだった。 植物はいかにも『 ここはメキシコなんですよ 』という風体のものがごく普通に生えていて、中でもやはりサボテンは目立つ存在だった。 サボテンといっても色んな種類があるのだろうけど、僕が目にしたのはニョロッと背の高いやつだった。 その姿形は、色こそ違えど、あたかもムーミンの中に出て来るニョロニョロのようなヤツだ。 そいつに、あの麦わら帽子にサングラス、ギターなんぞを引っ掛けてやったらそれこそメキシコを象徴するようなマスコットになるだろうに、、、 オアハカという街は思っていたよりも小さな街だった。 小綺麗なYHに荷物を置くと、既に薄暗くなりかけていた街を散策してみた。 メキシコ・シティでもそうだったことから、街の中心にある広場のことは「 ソカロ 」と呼ぶものだと勝手に確信していた。 そのソカロの辺りが一番の繁華街のようで、カテドラルや露店、土産物屋にメルカド(市場)、レストランなんかがある。 更には何処からともなく現れるアコーディオンを弾く少年や木琴を叩く男たち。 コロニアルな面持ちと雰囲気を醸し出すその広場は、なんとなく気に入った。 ここはこの辺りではそれなりの観光地にも関わらず、気付いたのはここを訪れる観光客よりも、ここに住む人たちのほうがたくさんこのソカロの周りにいることだった。 そこにいたのは子供連れの家族だったり、友人同士だったり、日向ぼっこする老婆だったり、読書を楽しむ老人だったり、何はなくともはしゃぎ回る子供たち、、、 どうやらこの街でここが一番集い易い場所なのだろう。 露店の周りで子供たちが遊んでいた。 みんなで一つのボールに群がって遊ぶ子供たち。 空気を入れただけの長細いビニール袋を宙に投げてはギャアギャア言いながらそれを追いかける子供たち、、、 子供たちは基本的にどこに行っても同じのようだ。 そんな普遍の事実が転々とする者には、ある種の安心感を与えてくれることを僕はしばらく振りに思い出していた。 ここオアハカには有名なものが二つある。 一つ目は、「 サント・ドミンゴ教会 」だ。 地図で確認してみると歩いて行けそうな距離なので、辺りを散策しながらぶらぶらと行くことにした。 ソカロからいわゆるコロニアル調の街を歩くこと20分、なんか大きな教会があるなと思って立ち止まったところが目指すサント・ドミンゴ教会だった。 なるほど、確かにどっしりとした感じのする教会だ。 見た目は( まあ、そこそこかな? )といった感じだったが、内部は驚嘆せずにはいられない造りになっていた。 生命の木と呼ばれる装飾が施されている天井を見上げると、僕はあんぐりと口を開けたまましばしの間動けなかった。 金箔と木彫りのレリーフからなるその装飾は始めはややコミカルな印象を受けたが、よく見るとその完成度の高さに驚かされずにはいられなかった。 二つ目は、「 オアハカチーズ 」だ。 それを求めにメルカドに行ってみることにした。 ここのメルカドはとりわけ地元の人専用という感じはせず、それといって観光客向けというわけでもない至って普通のメルカドだった。 更にはどこの国のそれとも同じように、何故か同じ物を取り扱う者同士が軒を並べあっているのである。 これは僕には全く不可解なことなのだが、ある意味決定権を持つお客には値段を張り合わせることが出来て好都合なのかもしれない。 服飾関係から始まって、野菜、果物、日用雑貨、肉類、魚類、乾物、パン屋、フレッシュジュース屋に簡易食堂。 そんな中にチーズ屋もあった。 チーズ屋ももちろん何軒ゥ固まるようにしてあった。 僕はその中で一番人となりの良さそうな人のお店を選んだ、、、 いつものようにね。 僕はこういうときは決まってそのお店の人の表情や雰囲気で選ぶらしい。 そのお店のおばちゃんのあまり商売っ気がなく、淡々としているところがその決定要因となった。 こうして探していたオアハカ名物のチーズはいとも簡単に見つかった。 特に選んだり、値切ったりするわけでもなく、早くその噂のチーズを食べたいがため、一切れだけ売ってもらうと、とっととお店を後にした。 次にパンを同じくメルカドで見つけるとそそくさとソカロに向かった。 早くそのチーズが食べたいのである。 オアハカ名物のチーズは、、、 結構、普通だった。 塩っけが強いこと以外は他の物と変わることも無く、ただ一つ裂けるチーズのようであった。 何とも空振りした気分のまま、一度に食べるには少し多いそのチーズをもぐもぐとしていた、、、 Copyright (C) HITOSHI KITAMURA All Rights Reserved.
by hitoshi280477
| 2004-09-04 05:28
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