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Equador vol.7 「 大、大、大、大、大失態!!  」

「 仁さん、、、
バッグが無いですよっ!! 」







 そう旅友が叫ぶ声が聞こえ、今聞こえたのが何なのか頭が理解する前に、僕はもう駆けていた、、、







 クエンカ を昼過ぎに出発したバスは夕方の6時頃「 Loja ロハ 」という街に到着していた。

 どうやらここからペルーまでの国際バスが乗れるらしく、実はバスを乗り継いでいったほうが割安なのだが、ついその利便性に負けてそこからペルー最初の街 ピウラ まで行くことにした。

 バスは夜の10時半出発で、明け方にはその次の街に着いているとのことだ。



 バスのチケットを手に入れた僕らは、キトから連日の移動で疲れていたこともあってバスターミナルを出ると目の前のロータリーの片隅に腰掛けた。 それまで背負っていたバックパックを地面に置いたとき、ドスンッと思いがけないほど大きな音がしたのは、きっと体が疲れていたためなのだろう。





 旅友が煙草に火をつけた。



 僕は煙草を吸わないが、多くの旅友との「 一服の時間 」に、どうやら僕も一呼吸をいれるタイミングを何時の間にか覚えたらしい。 急に体の底から「 ふっ 」と息を吐いてしまった、、、





 ほんの少しの沈黙の後、僕が話し始めた、、、

 「 ここから先のペルーとボリビアは何でも泥棒とか、強盗とかが多いらしいから気を付けないとね。 宿に荷物を置いている時や、バスに荷物を預ける時も信用出来ないから、このプラスチックのコードとか付けたら良いと思うんだけど、どうかなー?  」



 南米、特にこれから先のペルー、ボリビアはそういった事が多いと聞いていた。

 それは、世界でも稀にみる旅行者に対する犯罪多発地帯なのだ。

 だから僕なりに心の準備も、荷物の準備もしていたつもりだった、、、





 そんな事を話していると、一人の男が僕らの会話に割って入って来た、、、



 「  ♯◎・☆・※  」



 何と言っているのかほとんどわからない。 が、どうやら僕の隣に座っていた旅友の足元に何か落ちていると言っているような気がしたのは、その男が足元から何かを拾い上げるしぐさからわかった。 見ると男の手には小さく折り込まれた「 紙切れ 」があった。

 僕ら二人、目を丸くして、しかしいぶかしげにその様子を見ていると、男はその紙切れを旅友に手渡した。 旅友がそれを広げると、それは「 $1札 」だった。 本物かどうか確認したり、又それが誰の物なのか二人で話をしている間にその男はいつの間にか何処かへ行ってしまったようだった。





 その様子を見ていた近くのおばさんが、僕らに声をかけてきた。 これまた何と言っているかわからない。 バスターミナルの前のロータリーでの事、騒音があって聞き取りも出来やしない。

 おばさんが二回目に口を開いたときには、誰かが何とかかんとか、「 もち~ら 」とかなんとか、、、?

 その言葉を聞いたその瞬間は、僕はおばさんがほかの誰かがその$1札を落としたのを目撃したのかと思っていた、、、





「 仁さん、、、
バッグが無いですよっ!! 」




 振り返ると、ほんのさっきまでそこに有った筈の僕のバックパックが消えているではないかっ
!!

 刹那、僕は無意識のうちに立ち上がり、無我夢中で駆け出していた。

 いや、頭の中に一つだけあったことといえば「 僕の荷物 」、それだけだった。





 僕らの座っていたところと、声をかけてきたその男、そして、そのおばさんとの位置関係から僕は迷うことなく、僕の荷物が持ち去られたであろう方向を瞬時に計算し、駆けていった。

 「 まだ近くにいるはずだ 」

 そう思うのは先ほどの怪しい男がいなくなってから、まだ1分ほどしか経っていなかったからだった。



 その泥棒が逃げていったと思われる方向は左手には建物が、右手にはたくさんのタクシーが客待ちしているロータリーとその向こうには市街へ通じる道があり、そして正面にはバスが往来する場所があった。

 直感で建物の角を左に曲がると、僕の視界には10段ほどの階段があり、何人かの男たちが世間話をしている様子がちらりと見えた。

 その階段を駆け上っていくと、その建物の中から二人の軍服のような物を着た男たちが現れた。 どうやら警察のようだった。

 この時になって僕は初めて「  Ladron, Ladron!!  Mi equipaje!! ( 泥棒、泥棒!! 僕の荷物!! ) 」と騒ぎ出したのだった。



 「  Verdad !?  Donde?  Donde??  ( 本当かっ!? 何処だ、何処?? ) 」



 その警官らしき二人を連れて、その現場まで戻ってみるも僕の荷物が戻ってくるわけがないので、二人の警官が何やかんやと僕に聞いてくるのを無視して、僕は辺りを駆け回った。



 その泥棒が僕の荷物を持ち去ったであろう方向へ、、、 建物の周り、積み荷の積み下ろしをやっている車両や、その荷物の保管庫、客待ちしているタクシーたち、停車している大型バスたちの陰、反対側の道路に渡り向こうからは死角になりそうな建物の脇、、、



 5分。



 10分。



 15分。



 、、、、、



 ( もう無理だな、これ以上は、、、 )



 息が続かなくなった頃、そう思った。

 気が付けば、肩で息をし、鼻息が荒くなっていた。

 目を閉じて、何故か天を仰いだ。













Oooooh~ ,Noooo!!



 それ以上は何も頭に浮かんでこなかった。






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by hitoshi280477 | 2004-11-17 19:36 | Equador
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