世界でも有数なウミガメの産卵地ということで、やって来たのは「 永田いなか浜 」。 かねてより、一度ウミガメの産卵の観察なるものを経験してみたいと思っていたが、調べてみるとこの屋久島でそれが可能だとのこと。 いつか何処かで観たような、ウミガメが必死になってその新たな生命を産み落とす瞬間を、、、 ぜひこの目で! ウミガメの産卵の時期は5月中旬~7月中旬くらいというのは、屋久島行きを検討している時から確認済み。 それでも、もちろん自然のことだけに、全て「 運 」にかかっていると思われる。 しかしながら、あれやこれやと下調べ+人の協力+手配を進めて、、、 なんとか実現することが出来た。 「 永田ウミガメ連絡会 」という地元の団体がある。 ウミガメの産卵の観察を手助けしてくれる。 そもそもは、ウミガメの産卵の保護を目的として始めた地元の人々が、今では観察を指導・運営することに。 というのも、産卵を観察しにくる人々のマナーや、ウミガメにとっての迷惑行為をなるだけ阻止する為という、、、 ウミガメが産卵をする時は、人目を忍ぶかのように夜になってから浜に上陸し、産卵場所を求めて砂浜を歩き回る。 産卵場所を探している時は、実際に卵を産み落とす時は以上に警戒心が強く、特に光には敏感な為、 懐中電灯やら車のライトや照明等があっては産卵をせずに、海に戻ってしまうこともあるそうだ。 そういった人為的要因によってのウミガメの産卵数低下を防止する為に、この連絡会はある。 協力金700円ということが、人々の賛否両論を掻き立てるが、そもそもこれくらいで利益など生まれる筈もないのだから、、、 賛同しない人は参加しないほうが良いと思う。 簡単な講義から、観察、毎夜~早朝まで徹して砂浜を監視していてくれている、、、 全てはウミガメの保護の為。 ちなみに、ここ永田浜は「 ラムサール条約 」という国際条約に指定されている。 夜8時。 永田いなか浜にある連絡会の受付所に行く。 ここは予約制になっていて、受付を済ませる。 しばらく待つと代表者のような方から、屋久島とウミガメの関係から、連絡会の成り立ちの話、ウミガメについての簡単な講義などを受ける。 話を聞いていて気付かされたが、、、 人間がその産卵シーンを観に行くということは、ウミガメにとってははっきり言って迷惑な話ではある。 懐中電灯は点けないこと、二列で指導員の後を歩くこと、順番等を守ること、、、 の説明。 そもそも、ここに車で近づいた時も、車のライトを落としてくるように言われたのだった。 それらマナー・指示を守ってくれることを大前提に、産卵シーンの観察を手助けしてくれるのだ。 ウミガメが砂浜に上陸しているかどうかは、他の係員から無線で連絡が入る。 ほとんど何も見えない真っ暗闇の砂浜を、これら係員の手助けなしにはウミガメを探すことは至極難しいと思われた。 もちろん、その際に懐中電灯で照らせば良いのだが、、、 それではウミガメが産卵せずに帰ってしまう! そんなこんなでしばらくすると、ウミガメ上陸の知らせが入る。 時刻は八時半過ぎ。 分けても総勢30人にもなる観察希望者が、真っ暗闇の砂浜を先導者の後を歩いていく様子はかなり不気味。 真っ暗な砂浜を歩くことに戸惑いながらも、もうすぐウミガメに会えると思うと、皆足早やだ、、、 先頭が止まったので、列から先を見てみると、、、 砂浜に黒い何か大きなモノがうずくまっているのが見える。 係員に数人ずつ呼ばれ、その黒い大きなモノへと近づいて行く、、、 遂にウミガメとの遭遇だ! 思いのほかに早く遭遇出来たのに喜び、想像以上に大きなその図体に更に驚かされた。 ウミガメの産卵シーン、、、 この目で実際に見れたとあって、感動と興奮でいっぱいだ!? が、この段階ではまだ数十秒ずつしか見られない。 まずは参加者全員が一目ずつでも見れるようにとの配慮なのだ。 その後、既に砂浜に数頭上陸しているウミガメを見に、更に少人数のグループに分かれていく、、、 ポトリ、、、 ポトリ、、、 ポトリ、、、 母親ウミガメが卵を産み落としていく様子がよく見える。 一度に数個同時に落ちてくる、、、 その母親が自ら掘った砂浜の穴の中に。 一つの命から産まれる幾つもの新しい命、、、 なんとも感動的な瞬間だ。 実際、卵そのものも柔らかいのだが、真っ暗闇の中に照らされる産卵のシーンは、 新しい生命の誕生の瞬間ともあって、、、 何か柔らかく、暖かいモノに包まれるような印象を受ける。 神々しいと言っては、言い過ぎなのかもしれないが、、、 でも、何処か心にぐっと来るものがあることは確かだ。 データ的にみると、穴の深さは50~60cm。 一度に産み落とされる卵の数は130~150個くらい。 一度の性行為で、三回に分けて産卵するとのこと。 →1シーズンに400~500個くらいの計算。 約二ヶ月くらいで小亀たちが協力して、覆いかぶさっている砂をかき分けて、砂浜へと這い上がってくる。 驚くべきことに、ウミガメは「 温度依存性性決定 」という体質で、性別は砂浜の温度で決まるとのこと。 その境界線、、、 約29度。 砂浜の温度がこれより低ければ雄(オス)、高ければ雌(メス)となるとのこと。 実に不思議なのだが、そういうことなのらしい。 ということは、これから温暖化が進むと、、、 ? ちなみに、今では知れ渡っている話だと思うが、ウミガメが産卵の時に痛みをこらえて流している涙、、、 実はこの涙、涙ではなく、塩分を体の外に排出しているのだそうだ。 ウミガメはエサを食べる時に海水も丸呑みしてしまい、 そのままだと血液中に塩分が残り危険なので、目の所にある「 塩類腺 」という器官から、濃い塩水を涙のように排出しているのだそうだ。 日中の永田いなか浜。 強い日差しがギラギラと照らしている、、、 夜とは全く違う表情。 夜中のあのドラマチックなシーンの面影は、、、 ウミガメの足跡のみ。 「 これが自然の姿なのか、、、 」と「 それ 」を知る者にとっては感慨深くなってしまう。 実は以前はウミガメの産卵後、地元の人々はそれらを掘り出して食べていたそうな。 それが、30数年前から食べなくなり、逆にウミガメの保護活動に移り変わっていった。 しかし、そのお陰で今では産卵の為にいなか浜に上陸するウミガメの数は年々増えているそうな。 ちなみに、産み落とされた卵が立派な大人へと成長出来るのは、、、 5000分の一にも満たないそうな。 生き残ったものは、30年ほどの年月をかけて太平洋を旅していくのだそうだ。 彼らが再びこの浜に帰ってくるのは、一体いつになることやら、、、 それがウミガメの生きる世界。 それらを思うと、ここいなか浜にてウミガメの産卵を観察する機会に恵まれたのは非常に幸運なこと。 その幸運に報いる為にも、ウミガメの為に何かしらの行動をしないといけないと思う。 およそ二億年前から存在しているウミガメが、これからも生き残っていって欲しいから、、、 Copyright (C) HITOSHI KITAMURA All Rights Reserved.
by hitoshi280477
| 2008-05-28 19:55
| 屋久島
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