Argentina vol.1 「 世界最南端の街 ウシュアイア 」 -未-

 チリのサンチャゴから、僕はウシュアイアまで$316という大枚をはたいて飛ぶことにした。 バスという交通手段、陸路でここまで行けば約一週間はかかることだろう。 その途方もない時間を移動に使うことと、ルートそのものに魅力を感じなかった僕は、最後の手段である飛行機を使うことにした。 実を言えばそのルート、うまく海沿いに南下して行けば、氷河とフィヨルドの合間を縫うようにして進む観光船があるとのこと。 もしバスで行ったとしても、パタゴニアの雄大な景色が拝める機会があるかもしれなかった。 しかし、僕には時間がなかった。 僕は何故か「 年末までにウシュアイア 」と決めていたのだ。

 世界最南端と言われる街、ウシュアイア。 そこに辿り着ければ僕は南米大陸をちょうど半周したことになるからだ。別に一周するかどうかは決めていないのだが、、、 そして、それが年末年始ならば、尚のこと「 キリ 」が良いように僕には思えていたからだった。 確固たる予定がない日々の中で、自分にしか理解出来ない根拠だけが先へと進む原動力なのだから。

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 ウシュアイアの街は静かで可愛らしい感じのする街だった。 どこかヨーロッパの地方都市を思わせる佇まいだ。 というのも、少し高台から街を見下ろせば、眼前には海が広がり、海を囲むように荒々しいシルエットをした山々が見える。 後ろを振り返れば、それがこの土地の名前の由来なのかどうかは知らないが(実はここをここいらを船旅する人たちが海岸沿いの地元の人々のキャンプ・ファイヤーを見てそう名付けけたか?)、「 Tierra del Fuego 」 火の大地 と形容されるのに相応しいように峻嶮な面持ちをした山々を目にすることが出来る。 英語で「 snow capped 」という言葉があるが、ここのそれは正にその言葉が形容するように、頂上付近のみ雪で覆われていた。

a0086274_1235415.jpg 街には「 世界最南端の街 」をうたい文句にした看板と、商品がこぞって並んでいる。 本当のことを言えば、この街は世界最南端の街ではないらしいのだが、もう世界中に声も高々とそう言ってしまっているので、そういうことにしておこう。 そういう意味では世界中が黙認している街という形容詞を付けることが出来る。 街を歩くとすぐに気付くことは、ここには変わった植物が咲いているということだ。 もっとも僕がただ単に他の地域で目にしたことがないだけなのか、将又パタゴイニアという特別な環境が造り上げた固有種なのか、植物に詳しくない僕には検討もつかない。 知っている人にこのことを知られたら、少し恥ずかしいが。

 それにしても、この植物はウシュアイアの街には良く似合う。 というのも、その特殊な雰囲気が、世界最南端という特殊な街にはぴったりではないか。 そして、街の随所に咲き乱れるその様子は何処かこの街の如く、微笑ましく感じられてしょうがないのだった。



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 この街の人々は、よくある地方都市の人々のように素朴で親切だった。 僕が宿を探す為に、街中を歩き廻っている中訪ねた宿は、その宿代に不服そうな僕を見るとわざわざ他の安い宿を教えてくれたのだった。 そして次に訪ねた宿の主人も親切な人だった。 年末前というわけでか、宿はほとんど満員だった。 ドミトリーにして、$8とは南米では破格に高いが、何せここは「 世界最南端の街 」なのだからしょうがないのだろう。

a0086274_126047.jpg ここでは台所を使わせてもらえるのが何処も当たり前らしく、この宿もそうだった。 僕は自炊するのが好きなので、毎日ここで料理した。 よく作ったものと言えば、野菜スープだ。 いつからか我が家で食卓に出るようになった野菜スープ。 いろんな野菜を食べやすい大きさに切って、火の通りの悪いものから順番に鍋に入れていき、最後はスープの素で仕上げるといった、至極簡単な料理なのだが、これが美味しいのだからしょうがない。 それに旅行者に不足しがちな野菜をたくさん摂れるとこともあって、ほぼ毎日これを食べていた。 たまにハムやソーセージなんかを入れると豪勢になるところが、実家のそれとは違うところで、それだけで豪勢に思える僕は幸せ者のように感じられた。 肌寒いウシュアイアの夜にはうってつけのメニューだった。





 この街の特別なことの一つと言えば、日照時間の長いことだろう。 この街は南極に行く起点の街になるくらい緯度が高い。 そのため、自然と日照時間も長くなるのだ。 朝は5時前頃から夜は11時過ぎまで、実に18時間は日が出ている。 実に不思議だ。 世界には白夜と呼ばれる日の沈まないところや(というかその場所である一定の時期だけだが)、日がほとんど出ないところがあると聞く。 以前、ヨーロッパで出会った日本人学生はフィンランドで「 光 」について勉強していて、その話をしてくれたが、向こうでは日照時間が短い時期には人々が「 うつ病 」になりやすいとか。 ここウシュアイアでも同じなのだろうか?

 それにしても、日照時間のあまりに長いのはやはり体には合わないようだった。 何せ、日もまだ高いうちからベッドに潜り込まなくてはいけないのだから、、、





 「 もう12月なのに、、、 」 そう思ってから、僕ははっとした。

 ここは南半球だということを思い出した。 そうなのだ、南半球の12月は夏真っ盛りなのだ。 日本にいれば、今頃はかなり冷え込む時期になっているはずなのだ。 しかし、僕は南半球にいるのだ。 そんなことは、エクアドルの赤道記念館に行って以来気にしたことがなかった。 そうのなのだ、ここは南半球なのだ。

 どうりで、南極への起点となるほど緯度が高い街に来てもそこまで寒くないわけだ。 もちろん寒いといえば、寒いのだが、それは心地良い程度の寒さだった。

 しかし、南半球にあるこの街ももうすぐ新年を迎えようとしていた、、、

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by hitoshi280477 | 2004-12-27 09:31 | 未- Argentina
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