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Argentina vol.2 「 ゆく年 くる年 」 -未-

 「 海外にて新年を迎える 」 これまで旅行の経験がそれなりにあるにも関わらず、それは僕にとって初めてのことだった。 別に海外で新年を迎えるためにわざわざ来ているわけではないのだが、今回の旅程ではそれは自然のことだった。 もちろん新年を迎えるにあたって、気持ちは少し浮ついていたが、、、

 きっと今頃は、何処の街でも盛り上がっていることだろうが、ここウシュアイアはどこかひっそりとしていたのだった。 もともと人口が多くなく、今のシーズン、どちらかと言えば旅行者の数のほうが多いのだろうから、街が盛り上がりを見せるのは旅行者にそういうイベントを催しているお店ぐらいなのだろう。 しかし、そのお店でさえどこにあるのか見つけられないほど、ウシュアイアの大晦日は静かだった。





 少し小高い坂の上にある僕の泊まっていた宿は、一歩外に出れば街を見下ろす格好になり、海や、そのまた先にある険しい山々まで見渡すことが出来た。 大晦日も更けていき、辺りは少し薄暗くなり始めていた。 空の明るみより、家の明かりのほうが明るく見えだす瞬間でもあった。

 ひっそりと静まりかえるウシュアイアの街を前に、僕は少し物思いに耽ってしまっていた。 ここまでの道のりを振り返り、今日ここにいることを不思議に思ったりもした。 そして、今後のことを考えたりもした。

 ふと、「 日本にいる母はどうしているのだろう? 」と思った。 距離的には離れていても、連絡のやり取りをしていないわけではないのだが、ふとそう思った。 思えば、いろいろと心配をかける息子である。 小さい頃から心配をかけてばかりのことと思う。 特に、「 事後報告 」をするようになって、その方がお咎めがあまりないことを知ってからは尚更だ。 もっとも今日ここにいることも、あの頃の延長線上と考えていてくれれば、それで良いのだが。

 そして、「 兄は、、、? 」、「 友達は、、、? 」。

 そう思い出すと何だか無性に寂しくなった。 ここから日本は遠い。 けれど、僕はその距離的な問題よりも、精神的なことのほうが心配になった。 忙しない昨今の世の中だ。 それは人と人の距離を物理的にも、精神的にも遠ざけていると思う。 寂しい限りだが、しょうがない。 それに人が、例えそれが親しい間柄であっても、僕と同じように思っているかと思ったら、それはきっと間違いなのだろう。 皆、きっとそれ以上の何かで忙しいのだろう。 「 自由気ままに生きている自分があまり言えることではないかな、、、 」とも思ったが、「 何はともあれ、人はそれぞれの道を行くのだ 」と思った。 それで良いのだ。





 自分の将来のことも考えた。 現代の社会では僕の行動がどう受け取られるかはある程度察しがつく。 もっとも社会的な何かや、経済的な何かを見返りにしていることではないのだから、「 自分が良ければそれで良いのだ 」と自分自身に再確認した。

 「 それが何につながるのか? 」

 「 将来は何がしたいのか? 」 そうよく聞かれる。





 明確な答えをまだ持っていない僕は、こう思うようになった。 「 まだそこまで達していない 」と。 「 その時がくれば、なるようになる 」とそう思うほか、僕の中に答えはなかった。 そして、思うのは、、、 「 いつかその答えが見つけられる日が来るまで、自分の思うように前進するべきなのだ 」ということだった。





 間もなく一年が終わり、新しい一年がやってくる頃だった。








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by hitoshi280477 | 2004-12-31 09:34 | 未- Argentina
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