Mali vol.5 「 億千万のトイレ 」

 僕が泊まっていたバマコの宿は、ガイドブックによるとそれなりの数の日本人旅行者もお世話になったことのある宿とのことだった。 しかし、実際に行ってみると、その宿は想像以上というか、想定範囲以内限界の宿ではあった。

 4っつベッドがある大部屋には天井にファンが一つと、それぞれのベッドに蚊帳が吊るしてあった。 土床なのでちょっと埃っぽいが、その大きな部屋に一人だったので、結局4泊することになった。

 ガイドブックに書いてあることを鵜呑みにする程、旅の経験が無いわけではないので、ある程度のことはもちろん許容範囲だった。 アレ を除いては、、、





 「 this is african style ! 」


 と、そう説明された時、僕は苦笑いをして、まあしょうがないと思っていた。 時として、物事は選べないことがあるのを知っているからだ。 そんな事は今までいくらでもあったし。 が、しかし、、、

 アフリカン・スタイルと説明されたトイレは、ただ単に掘っ立て小屋の中に、コンクリートで造られた地面に丸い穴が空いていて、そこで大も小もするとのことだ。 トイレに電気はなく、紙もなく、ただ太陽の光を採り入れる為だけの窓が一つあった。

 トタンで出来た扉には何故かちゃんと鍵が付いていて、常に鍵の開け閉めをしなくてはならないこと、それとトイレ自体が宿の外にあるのでそこに行くまでだけが少し面倒なことのように思えた。 それだけだとそう思っていた、その時は。

 けれど、実際に用を足す時になって、自分の顔が引きつっていくのが分かった。 と、同時に驚いてしまって、どうして良いか分からなくなってしまったのだ!





 朝、いつものように朝食後にトイレに用を足しに行った時だった。 既に上り始めていた太陽が辺りをもう照らしていて、朝の爽やかな一時ではあった。 朝食後にトイレに行くというのはいつもの習慣なので、何も考えずにただいつものようにトイレに向ったのだった。 習慣なのだから、別段余計に考える事は何もないのだから、それは至極当たり前だと思うのだが、、、

 トイレの鍵はどうやら逆さまに取り付けられているようで、普通なら左回しに鍵を回せば鍵が開くというのを体が覚えてしまっているもんだから、そんなこんなで少し手間取ってしまった。 それに立て付けが悪いのか、鍵自体の性能が悪いのか、なかなか開けるのに大変な扉だった。

 ちょっと苦戦した後にやっと鍵が開いた、、、 そして、驚いたっ!!



 自分の背丈程ある扉から飛び出してきたのは、数えきれない程の蚊の大群だっ! 「 今までこれほどたくさんの蚊を見た事があるだろうか? 」と、自問してしまう程の量の蚊の大群だ。

 よくアジが泳ぐ時に皆でかたまって泳ぐ姿を、「 アジ玉 」と例えることがるが、この時の蚊の様子も似て非なるものがあるっ。 それ程、蚊の数は多かった。 まるで何か「 邪悪な気 」がトイレから流れ出て来る様な、、、



 小さな窓からは日の光が注いでいて、その明かりの分、このとてつもない程の数の蚊の大群ははっきりと見えた。 何処から沸き上がって来るのかはすごく不思議なのだが、いつまで経っても蚊がトイレから出てくるのは止む事はなかった。

 そんなトイレで用を足すのは大変だ。 本当に大変だ。 当たり前だ!

 こんな蚊の巣窟のような所で用を足すのなら、その辺でしてしまった方がハッキリ言って良いのだが、辺りには人の目もあるのでそうもいかない。 本当にその辺りで適当に用を足す事が出来たらどんなに楽かと思える程なのだっ!

 結局、トイレの扉を開け放ってから約3分後くらいにやっと蚊の姿は稀薄になった。



 どうするのか?

   ↓

 息をこらえるのしかないのだっ!



 どうするのか?

   ↓

 一気にするしかないのだっ!!



 そう意を決すると、後は バッ と入って、 グッ とやって、 ダッ と出るしかないのだ。

 それでも、用を足している時は、しきりに手足を動かしたり、体を動かしたりして、蚊になるだけ差されないように注意していた。 こんな所の蚊に刺されたら、マラリアどころではなく、きっと正体不明の変な病気をもらうに違いない。

 それだけいろいろと注意して用を足しても、きっと見えない何処かが刺されてしまっているかもしれないという疑惑は残った。 何せ相手は何百匹とも、何万匹とも、何億匹とも言える程の大群なのだっ!!!!! これほどの大群の蚊はそう簡単にお目にかかる事はないと思う。 ジャングルのどんな奥地だって、これ程蚊が密集している事はないことだろう。 そう思うと、ある意味貴重な体験をしたことになるのだが、、、 いや、しかしっ!?






Copyright (C)  HITOSHI KITAMURA All Rights Reserved.

[PR]
by hitoshi280477 | 2006-02-05 16:41 | Mali
<< Mali vol.6 「 月曜... Mali vol.4 「 首都... >>