Ghana vol.9 「 野口英世氏 」

 「 黄熱病 」という病気がある。

 ウイルス性出血熱で、南米やアフリカでみられる病気。 熱帯縞蚊が媒介生物で、人から人へと感染する。 皮下出血や歯肉出血、黒色の嘔吐、黄疸、貧尿、血圧低下などの高い予後不良の疾患。 発病から約一週間で治癒する事もあり、約10%程度の人が死亡すると言われている。 特効薬はなく、症状に応じた治療をするのみ。



 黄熱病といえば、南米、特にアフリカを旅する人の間では、マラリアと並んでよく知られている病気だ。 というのも、マラリアのようにかかり易いというわけではないのだが、人から人へと感染するという病気の為に、アフリカのある数カ国では旅行者に対して黄熱病の予防注射を義務付けていて、それがいわゆる イエローカードの所持の義務 ということになるからだ。

 呼んで字の如く、イエローカードは黄熱病の予防注射を受けている証明になる黄色い証書だ。 一度この予防接種をしたら、10年間有効なのだが、実は以前エジプトのカイロで打った時の証明書は、その後の南米旅行中のエクアドルで荷物ごと盗まれてしまって困っていたのだ。

 というわけで、南極以後のアルゼンチンはブエノス・アイレスで、無料 で再度接種したのだった。 果たして、それが良い事なのかどうかは知らないが、、、 ちなみに、日本ではこの予防注射は約8000円程するとか? カイロでは、確か20円くらいだったが?


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 ここガーナのアクラにて、その黄熱病の研究に尽力した日本人がいる。 日本人であるならば、絶対にと言って良い程耳にしたことのある人物だ。 福島県出身の細菌学者、「 野口英世 」だ。

 幼い頃に患った手先のハンデを克服し、ただひたすら学問に打ち込む事で頭角を表し、遂には伝染病研究所を経て、ペンシルバニア大学助教授、更にロックフェラー医学研究所員にまでなった。 その後、その分野にて活躍、そしてここアクラへ黄熱病の研究の為にやって来たのだそうだ。

 氏は、最終的には自ら研究していた黄熱病を患って、遠く祖国を離れたこの地で病没した。





 ここアクラにあるガーナ大学医学部付属病院には、当時の彼の功績を讃え、彼の銅像とその当時の写真やら研究に必要だった器具、それに新聞の切り抜きなどが研究室の一室にて見ることが出来る。

 

 ガーナ大学医学部のキャンパスのような所なのだが、そこでは、当たり前だが、白衣を身にまとい、眼鏡なんかをかけた如何にも知的に見えるガーナ人の生徒や研究者がいる。 そのキャンパスの外の世界の人間とは到底同じ様には見えない程、彼らはそれだけで立派な人物に見える。

 そんなキャンパスを歩いて行くと、そこに日本庭園と称された今ではほとんど手入れなどされていない庭の中に、氏の銅像が ど~っんと置いてある。 実際は銅像なのだが、その表面が何故か金色に塗られている。 まあ、そんなことはどうでも良いのだが、、、

 実に立派な銅像ではある。 先程尋ね回った時には、あまりに人が知らなさ過ぎて少し焦ったが、ちゃんとした医学部の受付で尋ねると、門番でさえ知っていた程だ。 人々が彼の功績を讃えて建てたというのだから、やはりそれなりの者にそれなりの物を作ったということか。


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 研究室の一角に設けられているという氏の展示室に入れてもらう事にした。 小さな部屋の中には、氏の写真や研究の様子、それに新聞記事やら研究に使用していた顕微鏡などが置いてある。 中でも一番目を引いたのが、氏の母親であるシカが氏に宛てて書いた手紙だった。

 というのも、氏の母は字の読み書きが出来ないことで有名なのだ。 もっとも、あの時代はそれが当たり前だったのだから、それが特別どうと言う事ではないのだが、ただその手紙自体は、その母親がどうにかして自分の思いを遥か遠く離れた地にいる息子に伝えたい思いで一生懸命書いた手紙なのだ。

 その為にどうにかして字を習ったのだろうが、如何せん付け焼き刃とでも言おうか、字が読みにくい。 読みにく過ぎて、恐らくあるであろう誤字・脱字さえも分からないほどだ。 しかし、その字体には、何処か重みがあった。 きっと息子に自分の気持ちを伝えたい一心で書いた手紙だけに、それが字そのものからも伝わってくるのだろう。

 何とも泣ける話ではないか?





 当時の氏の研究活動が一体どういうものだったのか、どれ程のものだったのかをあまり知らないが、わざわざこんな遠く離れた異国の地へ研究しにやってくるのだから、それは相当な事だったろうと思うし、それに今では世界中でその黄熱病の予防注射が普及していることを考えれば、彼が世界にもたらした事の大きさが伺い知り得る。

 いやはや、立派な日本人ではある。






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by hitoshi280477 | 2006-03-03 09:11 | Ghana
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