Easter Island vol.3 「 逃したくない瞬間 」


 「 一生に一度しかないかもしれない機会を逃す手はないですよ 」



 僕は一緒に車を借りていた日本人旅行者たちにそう言った。 出発時間のことで少し納得出来なかったからだ。 時間はある程度は分かっていたが、それも定かではないし、また島の反対側まで車でいったとしてもそれなりの距離もあるし、何よりも早めの行動をすることが望ましいからだ。 何よりも、その瞬間を逃す手はないのだから、、、





 午前6時。 僕はその二人の同乗者と宿を出た。 そんなに早く宿を出たのは、もちろん島の反対側まで行って日の出を観る為だ。 昨日一日車を運転した結果、僕が一番車の運転が安定していたこともあったし、運転したかったこともあって、僕が真っ暗闇の島の道路を運転することになった。 左ハンドルの車を運転するという事、早朝に車を運転するのには少しばかり慣れているのもあって、人任せにするよりは自分でやりたいと言うのが本音のところだ。

 島内を巡る道路はほぼ一本道。 その大部分は舗装されてはいるが、道がウネウネと曲がりくねっているし、街灯のない道は真っ暗で、しかもその時に限っては、かなり強風と大雨が降っていた、、、





 6時半。 到着した頃のアフ・トンガリキはまだ真っ暗で、雨が吹き荒れていた。 そんな中では日の出どころか、15体いる筈のモアイの姿も見えない。 適当な所に車を停め、前日に買っていおいたクッキーで簡単な朝食を済ませる。 昨日の夜も遅くまで、その日に行った場所のこと、見たモアイのこと、今日の予定などを話し合っていた為に皆少し眠い。 あれだけ移動と観光を一気にやって、はしゃぎ過ぎ、疲れているのもある、、、

 しばらくして、窓の外に目をやると少し明るくなってきたのが分かる。 同時に雨も弱くなって来た。 辺りを見回すと、どうやら先程まで荒れるように吹いていた風も静かになっていたので、とりあえず外に出てみることにした。 まだ、寒い。

 15体のモアイがいるであろう海の方を見ると、確かにもうモアイの姿がうっすらとだが確認出来る程にはなっていた。 そう思うと、小雨も、風も、寒さも忘れて、僕はカメラを持って車を飛び出した。 日中の日差しの強さと暑さはなく、少し顔や手先が冷たかったが、それはあまり気にならない。 そんなことはどうでも良いのだから、、、

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 陽が上り始めると、それまでぼんやりと見えていただけのモアイの姿がよりくっきりとしてきた。 15体もあるのだから、その全容を見逃すことはないのだが、その一体一体に注視出来る程、陽の光は強くなって来た。

 それまでは何処からのアングルが良いのか場所選びや、「 ちょっと凝った写真を写真を撮ろうか? 」などと考えていたが、陽の上る様子を見て、僕は結局真っ正面からその15体からなるモアイ像たちをカメラに収める事にした。 余計な技術などは必要としないほど、その光景は素晴らしかった。





 しばらく太陽が雲の中に隠れていたが、僕は待っていた。 再び辺りが薄暗くなってはいたが、「 まだ何かある 」、そう思って僕はじっと待っていた。 モアイの向こうにある空を見ると、さっきまでの暖かみを帯びた空の色はなく、今では灰色がかっている。

 再び小雨が降り出し、風が吹き出してはいたが、僕は待っていた、、、 その瞬間を。


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 再び陽の光が現れたころのその光景は実に、、、 神々しい。 それまででも確かに存在感のあったモアイ像たちではあるが、雲の上から降り注ぐ陽の光が絶妙な演出を施していて、その姿がまるで他の世界からの使者のようにさえ見える、、、





 この瞬間を僕は待っていた。

 こんな光景を予期してはいなかったが、、、 早起きして良かった。



 「 一生に一度しかないかもしれない瞬間 」

 そんな瞬間を見逃す手はないのである。






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by hitoshi280477 | 2005-11-30 07:33 | Easter Island
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