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Myanmar-2 vol.1 「 東京ゲストハウス 」

 三年振りに訪れた宿は、相変わらず居心地の良い場所だった。 宿泊者の溜まり場であり、団らんの場所であったリビングが懐かしく感じられた。

 前回ミャンマーに来たときも、首都のヤンゴンど真ん中という立地と、ミャンマーなのに日本人経営の宿ということが気になってここに決めたのだった。 その時は、まる二晩ほどかなりの高熱を出し、その時居合わせた宿泊者と宿の従業員たちには多大な心配をかけてしまった。 結果として、「 マラリア 」を罹ってしまった僕は、力なくミャンマーを後にしたのは今も良く覚えている、、、

 今回は「 旅のリベンジ 」ならぬ、「 再訪 」になるわけで、それはやはりミャンマーの色濃く残っている文化と、世界でも稀で特殊な状況に生きる人々の様子を知る為だった。 その基点となるのが、首都のヤンゴンであり、この「 東京ゲストハウス 」なのだ。





Myanmar-2 vol.1 「 東京ゲストハウス 」_a0086274_1925715.jpg ここのゲストハウスのオーナーは、金子さんという年配の方だ。 一見すれば、その人となりが感じられる方。 話をすれば分かるが、金子さんは良く人のことを見ているし、また以前は世界中を仕事をしながら回っていたとかで話も幅広い、それでいて人に押し付けがましいことはなく、どちらかというと親しみ易いのだ。

 従業員を三名と、裁縫士のような人が一人いるが、金子さんのように世界を広く見てきた人物が彼らの上にいると思うと、彼らは相当恵まれていると僕は本気で思う。 特にこの「 鎖国 」のようなミャンマーにおいては、、、

 ヤンゴンのど真ん中に宿を開いて既に十年近いとか? もちろん外国人が開業することと、経営を続けて行くのは難しいだろうと思われる。 それに、ミャンマーの政治事情、経済状況を考えれば、その「 決断 」には勇気のいったことと思われる。 それでも、もうそんなに長い間この宿を経営されているとこを見ると、ある程度の「 成功 」と「 満足 」を感じても良いと思った。





 この宿には他の宿と比べて色んな日本人が集まる。 というのも、ヤンゴンを訪れるのは旅行者のみでなく、語学留学する人、日本語を教えに来る人、またお坊さんになりに来た人もいる。 そんな中で、最初の地であるこのヤンゴンに日本人経営の宿があるということで、様々な思惑でミャンマーを訪れた人たちが集まるのだ。 もちろんそこにある「 情報量 」を見込んでのこともあるのだが、、、

 そこでこのリビングならぬ、団らんスペースがここの宿泊者たちの情報交換並びに、憩いの場としてある。 そこは朝も早くから、夜遅くまで賑やかな場所となる。 僕がいた時は、ミャンマー人女性と日本人男性の結婚を予定しているカップルがいて、皆その話で持ち切りだった。 お互いの文化の違いや、価値観の違いの前に、国籍の違いという大きな難関があり、しかもミャンマーの特殊な状況から、ミャンマー人女性と日本人男性の結婚は難しく、反対の場合は比較的簡単なそうだ。 二人とも初めてのことだけに、ほとんど毎日、日本大使館に足を運んでいたし、散々皆の前で話し合いをしていた。 単なる野次馬である僕は、「 ふ~ん 」とか「 へ~っ 」とかしか言えることがなかった。





Myanmar-2 vol.1 「 東京ゲストハウス 」_a0086274_19252886.jpg 金子さんと従業員の面々は仲が良く、ちゃんと雇用者と労働者という立場を忠実に守りつつも、昼間は皆でトランプをしたりしている。 その様子が不思議と自然なのは、きっと金子さんの従業員に対する配慮と、従業員たちの金子さんに対する気持ちの現れなのだろう。

 東京ゲストハウスでの最近の関心事の中心と言えば、一番年上である裁縫士の人の赤ちゃんだ。 現在十ヶ月になるその赤ちゃんは、奥さんもこちらの人なので生粋のミャンマー人にも関わらず、この日本人のお爺ちゃんに一番良く可愛がられていて、また懐いてしまっている。 やっと上下二本ずつの歯が生えてきたくらいなのに、どうやらその雰囲気を感じてか、このお爺ちゃんにくっついている。

Myanmar-2 vol.1 「 東京ゲストハウス 」_a0086274_19255078.jpg 金子さんが「 アイコ(愛子?) 」と名付けたことから、従業員までもがその赤ちゃんを「 アイコさんっ 」と呼んでいる。 何の運命の悪戯かは知らないが、とにもかくにもこの赤ちゃんはこの日本人のお爺ちゃんにことのほか愛されている。 金子さん曰く、「 以前はミャンマーに来る事さえ頭になかったのに、、、 今ではここで子守りをすることになるとは、、、 」と言う。

 人の人生とは実に不思議なものだ。

 金子さんのお爺ちゃんぶりはなかなか様になっていた。 金子さんの表情が、宿主からお爺ちゃんになっていたのは言うまでもない。 「 この先、このアイコにどう関わっていくのかが、これからの僕の新しい挑戦です 」と言うその言葉には力がこもっていた。





 そんな訳で、ここ東京ゲストハウスは今日も賑やかだ。 ここを訪れる人々、それを迎える金子さんと従業員たち、、、 ファミリーライクでありながら、きちっと仕事をこなすこの宿の姿勢が僕は好きで、言葉では表現し難い「 居心地の良さ 」をこの宿は提供してくれている。  いつまでもそうあることを願います。






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by hitoshi280477 | 2005-08-01 01:40 | Myanmar-2
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