中米を縦断するパンアメリカン・ハイウェイを通って首都サンホセへ行く途中でバスから降ろしてもらい、横道にそれ、霧に霞む山道を走ること2時間余り、この地域の中心地とでも言うべき場所「 サンタ・エレーナ 」というところに来ていた。
サンタ・エレーナの街はこじんまりとしてはいるものの、道中の民家や人気の少なさを考えれば僕には充分立派な街に見えた。 街の通りにはたくさんの外国人観光客が目に付き、大きなスーパーや、レストランなどなど、山の中にしては人と物が充実していた。 その街の中心を少し下った所に宿をとることにした。 ここには「 モンテ・ベルデ 」と呼ばれる特別自然保護区があることでも有名で、コスタリカにある数ある自然保護区の中でもここは観光客が多いようだ。 その理由の一つとして、幻の鳥と呼ばれ、世界中のバードウォッチャーの憧れとも言われ、更にグァテマラでは聖鳥として扱われ、紙幣にも使われている鳥「 ケツァール 」が見れるからだ。 否、正確には、見ることの出来る確率が高いと言ったほうが良いのだろう。 が、しかし。 幻の鳥と呼ばれ崇められるものを果たしてそう簡単に拝めるものなのだろうか? 鳥の生息環境なんぞ何も知らなく、ただの通りすがりの者なんぞにそのチャンスはあるのだろうか?? しかし、まずは一動だ。 迷っていても、考えていても、何事も進まないのである。 そう思うと、早速行動を開始することにしたのだった。 ケツァールを見ることに関しての情報などもう必要なかった。 ただ現場に赴き運に身を任せれば良いだけの話しなのである。 ここで二つの選択肢があった。 一つはそのモンテベルデの自然保護区に行くこと。 もう一つは「 SKY WALK 」というのに参加することだった、、、 後者を選ぶことにした。 何故なら、そこでは「 SKY TREK 」という非常に面白そうなものが体験出来るからなのだった、、、 「 両手でこのバーを掴んで、両足はクロスさせてなるだけ高く上げるように。 スピードが出過ぎるようだったら反対側にいる係の者が合図するから、そしたらキャノピーをワイヤーにぶつけるようにしてスピードを落とすんだ そして、、、 、、、 」 そんな説明を一通り受けると、いざ本番になった。 むろん初めてである。 説明された通りにバーを両手で掴み、両足をクロスさせ、全体重を直径2cm程のワイヤーとそのキャノピーとやらに託した。 要は宙ぶらりんなのだ! ガイドの兄ちゃんは僕が用意出来たのを知ると僕を足場のある高台から、その森の中よりも明るみのある外へと押し出した、、、 う ひょ ひょ ひょ ひょ~ 叫んだ。 そのワイヤーに全てを任せるという恐怖にではなく、その絶景と爽快感にだ! 足場を離れた僕の目に飛び込んできたものは、朝靄の残る濃緑の世界だった。 見渡す限りのその濃緑の世界は今まで目にした緑の中で一番濃かった。 良く見るとそれは緑のグラデェーションになっているものの、ワイヤーを伝って滑り落ちる速度ではやはり濃緑だ。 そして、その体感速度は速く、朝の冷たい空気が気持ち良い、、、 ( うわっ こいつはおもしれー ) そう心の中で思いながら、いや絶叫しながら何度も何度もその SKY TREK を楽しんだのだった。 しかしながら、ここに来た本当の目的は「 ケツァール 」なのだ。 参加した「 SKY WALK 」というのは地上高く鉄製の橋がいくつか架けてあって、鳥の目線で森の中を勝手に歩き回れるものだ、、、 が? 歩いた熱帯雨林の道は苔に包まれた木々が生い茂り、シダ類のような植物が生え、うっすらと霧が立ちこめていた。 強い日の光がその鬱蒼と茂る熱帯雨林の中に差し込んで来るものの、太陽自体は目にすることが出来ない。 それほどここの熱帯雨林は密度が濃かった。 森林浴、まさにそんな言葉が相応しいところだ。 想像してたよりは蒸し暑く感じられなかったのはきっと雨季の雨量のせいなのだろう。 ひっそりとした道を一人歩いて行くと、どこからともなく鳥の鳴き声が聞こえてきた。 それはあたかもこの密度の濃い森がフィルターの役目を果たしているようだ。 透き通った声がその森の中でこだまする、、、 とても幻想的な瞬間だ。 森の中には様々な鳥がいることはわかっていた。 全神経を集中して耳を傾け、目をこらすものの、、、 この時ばかりはこの神秘的な森も非情に思えた。 森の密度が濃過ぎて何処に何がいるのか、何処から聞こえて来るのか、、、 まるでこの森はここに生きる全ての生き物を守っているかのように思えた。 もともとケツァールは緑色なのだ。 尻尾をいれれば体長1mになると言われても、この緑一色の世界では見つけ出すのはすごく困難だ。 そんなんだから、もし仮にケツァールが僕の視界に入っていたとしても、きっと見つけられないのだろうといつしか思うようになってしまっていた、、、 結局、僕の見つけたケツァールといえば、、、 Copyright (C) HITOSHI KITAMURA All Rights Reserved.
by hitoshi280477
| 2004-10-01 17:46
| Costa Rica
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