「 当機はまもなく、、、 」 などというアナウンスもなく、僕を含む乗客10人程の小さなプロペラ機はこれまた小さな滑走路に着陸した。 がたがたなその滑走路は全長およそ300m。 以前、TVで観たどっかのアイドルグループがこのプロペラ機とこの滑走路で競争したら勝てるかもしれないくらいの長さだ。
そこに「 Rio Shidra Aeropuerto 」と書かれた木製の看板がかかっている小さな掘っ立て小屋がある。 空港と書いてあるのだからそうなのだろう。 そして、歩いて五秒で船着き場に着く。 というか、その掘っ建て小屋からの唯一の道そのものが船着き場になっている。 世の中、「 ところ変われば 」だ。 僕はパナマ・シティの宿で他の旅行者から勧められた「 Robinson Island 」に行くことにしていた。 空港兼船着き場からボートで行くこと30分弱。 椰子の木をてんこ盛りにした感じの小さな島がその島だった。 歩けば一周10分程のその小さな島はどうやらRobinsonという名の人のらしい。 この島には旅行者しかおらず、地元の島民たちは他の島に住んでいるとのこと。 寝る所は椰子の葉と木々で作った小屋にハンモックで寝るということで島のムード全開だ。 トイレはというともちろん自然の中ですることになるのだが、木で作られた小さな桟橋の上に囲いがあってそこで用を足すことになる。 透き通るほど綺麗な海の中にするのは気が引けるのだが、島なのでしょうがない。 それどころか、そこでは完璧なエコシステムが採用されていて、桟橋トイレの真下には小さな魚たちが群れを成して「 今か、今か 」と待っているのである。 そして、その小魚たちが大きくなった頃、人間様が頂くという自然の流れがここでは今日でも目の当たりに出来る、、、 この島での時間は他のどの島のものよりもゆっくりだった。 透き通る程綺麗な海を眺めては、真っ青な大空を見上げては、遥か遠く水平線に浮かぶ椰子の木満載の島々を望んでは、、、 ゆっくりするのである。 無論、島に閉じ込められている状況なのでそれしかすることが無いというのもある。 村は他の島にあるので、そこまでは毎回15分程、ボートでの小旅行となる。 島を離れて海に飛び出せば、視界の限りに点在する島々が見える。 まるで作り物のようにさえ見えるその景観は美しすぎて、言葉にするのは難しい。 遠くには夏休みを連想させる入道雲がもこもことしていた、、、 一度だけイルカの群れがボートの横を泳いでいったこともあった。 ここはそんなところなのだ。 村のある島は人と椰子の葉でできた家でごった返していた。 その密度といったら、、、 島そのものが村という程だ。 プライバシーなどという言葉はここには存在しないかのように家は林立している。 村の中心には学校があって、子供たちが野球やバスケットボールなどをしていた。 どの子も他の子供たちと同じく元気いっぱいだ。 むしろもっと元気なのかもしれない。 そこいらじゅうを駆け回っていたり、みんなでぎゃあぎゃあ言ってる。 いつかどこかで見たことのある光景を遠く離れたところで目にする時は、僕にとってなんだかほっとする瞬間だ。 この村には小さな商店があるので、僕ら旅行者の世話をしてくれる兄ちゃんは毎朝ここに買出しに来る。 水や食べ物を始め、トイレットペーパーやタバコなど、一通り何でも揃うようだ。 パウンドケーキなんかも売っていて、しかもこれがかなりいけるのだ。 ちなみに、一切れ25セント( 30円くらい パナマではUS$のみ通用する、これは島でも同じだった )。 ここサンブラス諸島にはクナ族の人々が住んでいる。 ここの女性はきらびやかな服を今日でも身につけていることで有名だ。 赤が主体で袖にフリフリの付いたシャツに、これまた派手なスカートに腰巻きを付けている。 ふくらはぎや腕には小さなビーズで出来た飾りを巻き付け、頭には赤いほっかむりをかぶり、人によっては鼻筋に黒い一本の線をいれ、鼻の中に金色の輪っかを付けていたりもする。 以外に若い娘さんたちでもその民族衣装ならぬ服を着ている。 お腹と背中には『 モラ 』と呼ばれる何枚かの布をくり抜いて、縫い合わせたものを付けている。 これがまた可愛くて、興味深いのだ。 その手の込んでいることはもちろんなのだが、デザインがまた変わっていて、伝統的な幾何学模様や架空の動物をモチーフにしたものなんかがある。 とてもユニークであり、見栄えがするものだ。 きっとここの女性たちのおしゃれに一役買っているのだろう。 実際、それに惹かれた僕はとある民家で何枚か購入してしまった。 最近は手抜きモラが結構出回っているとのことだが、自分の目でそれを縫った人と物自体を見たので、自信を持って購入することにした。 それにひきかえ、何故か男の人たちは至って普通の服だ。 若い男の子たちなんかはサッカーやバスケットのユニフォームなんかを着くずしてかっこつけてるみたいだった。 このクナ族の女性たち、見た目がかなりエキゾチックなために旅行者の写真の標的になるわけなのだが、そこにはしっかりビジネスが確立されていて、写真一枚もしくは一回につき$1とかが相場なのようだ。 僕は村で見かけた女性を遠目から何枚か撮ったが、やはりちゃんとした写真を撮りたかった。 実は僕はモラを購入した家でみかけた女性に目を付けていた。 しかも、何処でどう撮るかまで計画していた。 しかしながら、写真を撮るときになって、いざその女性を探すとこれが見つからなかった。 嫌な予感がしつつも、その日の午前中は諦めることにして島に戻ることにした。 が、島に戻ったとたんに風は強くなるし、雨は降ってくるし、おまけに雷まで鳴りだしてしまった、、、 僕の予感は的中した。 島の天気は変わり易いのだ。 チャンスを逃すとこういうことになるのはわかっていただけに後悔の念が絶えなかった。 しかし、午後三時を過ぎた頃になると、なんとさっきまでの嵐のようだった天気は一転して日も射し始めたのだった! これはチャンスと思い、旅行者総勢11人で再び村へと戻ったのだった。 村に着くなり、僕はその女性を探し出し、早速モデルになってもらうことにした。 その女性はいやがる様子もなく、わざわざ化粧までして出て来てくれた。 周りで若い女の子たちが冷やかす( 結婚しろとか言われた お母さんはそこにいた他の十代の娘たちの中から好きに選んで良いと勝手なことを言っていた、、、 )中での撮影となったのだが、僕は集中して写真を撮らせてもらった。 椰子の葉でできた家の壁を背景にしたことと、日が傾いて来たことも手伝ってかなり雰囲気が出て、民族衣装を着てどこか誇らしげに立つ彼女の姿をうまく写真に収めることが出来たと思う。 サンブラス諸島、そこはどこか特別なところだったように思える。 透き通るほど綺麗な海、 水平線の果てまで続く島々、 真っ青な大空、、、 朝には美しい朝焼けが、 昼には照りつける太陽が、 そして、夜には満点の星空と流れ星が、、、 「 いつまでも変わって欲しくない 」 そう願うばかりだ。 きっとここに住む人たちや、ここを訪れる人たちが島に、海に、空に、星に、自然に、人間同士お互いに敬意を払い続けることが出来たら、これからもこのサンブラス諸島の素晴らしさは変わらないのだろうと思う。 そうあって欲しいものだ。 Copyright (C) HITOSHI KITAMURA All Rights Reserved.
by hitoshi280477
| 2004-10-08 17:51
| Panama
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