Argentina vol.6 「 タンゴは何処? 」 -未-

 アルゼンチンのブエノス・アイレスと言えば間違いなく「 タンゴ 」だ。 それは一体何なのか? ダンスということ以外は頭にない僕にとっても、観てみたいものの一つであることは間違いなかった。 それはアルゼンチンの牛肉よりも、ワインよりも、僕の興味を一番そそるものだった。

 しかし、問題は「 何処で観るか 」というのと同じくらい「 何処で観れるのか 」ということだった。 僕は、僕が勝手に想像するタンゴを観るべく、まずは会場を探さなくてはならなかったのだった。




「 路上でのタンゴ 」

 ブエノス・アイレス一の繁華街と言えば、フロリダ通りとラ・バジェ通りの交差する辺りだ。 その界隈にはお土産物屋や、洋服や、雑貨や、本屋を始め、カフェやレストラン、映画館などが所狭しと軒を連ねている。 そこを行き交う人々の往来は激しく、始めのうちこそ「 ああ、大都会なんだな、、、 」と思うが、しばらくすると嫌になるほど人で溢れている所だ。

 そのフロリダ通りとラ・バジェ通りの交差する辺り、日も傾き始めた頃に、二人の男女が何処からともなく突如現れ、スピーカーを用意し、それに集まる人々に囲いを作らせ、さも「 これから始めるぞっ 」とばかりに柔軟体操をしだすのだった。

 そして、頃合いを見るや否や、二人は踊りだした、、、


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 ブエノス・アイレスという大都会の真ん中で、彼らは他の通行人の迷惑を省みることなく、、、 というより実際は、他の通行人の中にも足を止める者が多かったのは意外だった。 それにしても、淡々と踊る彼らはタンゴを初めて見る僕を充分魅了した。

 ほんの数分のタンゴではあったが、思いがけないタンゴとの出会いに、彼らの用意した「 帽子 」に入れるコインも心なしか多くなってしまった。




「 Bar Sur 」

 某ガイドブックにお勧めのように書かれていたタンゴ・ショーをやるバー 「 Bar Sur 」。 街中にある金券ショップにてその入場券を購入した。 ただ、それが本当に入場するだけの券だったとは、向こうの入り口で「 予約なしでは入れません 」と言われるまでは知らなかったが、、、

 なんとか無理矢理入れてもらうと、そこには既に数人の観光客らしき人々が座っていた。 一番端っこの席に追いやられても、タンゴを観れると思うとそれはどうでも良かった。 ただ、つまみのような軽食は無料で付くのだが、飲み物代の高さには驚かされた。 法外だと言って間違いはないと思う。 とにもかくにも、「 ショー 」は始まるのだった、、、



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 気付けば、ここのショーはショーであって、タンゴのみのショーではないようだ。 ピアノやアコーディオンの音に合わせてタンゴがちらほらと出てくるのだが、総じて何処かの「 ディナーショー 」のようだった。 タンゴそのものは、小さなバーでのことだけに、迫力とは無縁の物静かなものだった。 それが僕の勝手にイメージする「 大人の洗練された、情熱的な踊り=タンゴ 」とは違っていたが、それはそれで良いという程度のものだった。 感想としては「 ふ~ん 」と言ったところか。



 それよりもここで一番目を引いたのは、並みいる老練の演奏者たちの中で、ひと際年季の入ったマエストロだった。 マエストロと彼の教え子のような女の人、と言ってももう随分なおばさんだが、がそう呼んでいた。 確か齢は80いくつかだと言っていた気がする。 背中は丸まっていて、耳も少し遠そうだったが、そのピアノを演奏する様子からは、彼の年齢は全く感じられなかった。

 いかにも「 マエストロ (=先生、職人?)」という彼の演奏は見事だった。 足下のおぼつかない老人とは思えない。 やはり何かそういう物を持っている人は強い、そう感じぜずにはいられなかった。 演奏する前よりも、そのオールバックとスーツ姿は僕には格好良く見えてならなかった。






「 ミュージカル タンゲーラ 」

 宿で働くおじさんに「 普通、地元の人は観光客用のショーじゃなくて、これを観るんだ 」と教えてもらった。 早速、例の街中にある金券ショップに行くが、なんと「 今日の分に限って劇場でしか買えない 」、と言われた気がしたので、しょうがなくそのまま劇場へと直行することにした。



 「 どの席がお勧めですか? 」 そうつたないスペイン語で尋ねると、チケット係の人は適当そうなチケットを用意してくれた。 それからやっと辺りの様子がちょっとおかしいことに僕は気付いたのだった、、、

 チケットを見てみると、「 8時開演 」と書いてある。 時、既に8時半近い、、、 大失態だ。 何故なら、僕は9時開始と聞いていたから、少し早めの8時半に到着するようにしたのに、、、 慌てて近くにいる係に問い合わせると、先ほどチケットを用意してくれたおじさんと目配せをしてから、中に通してくれた。 僕が手にしたのは「 既に開始してしまったショー 」だったので、安くしてくれたようだった。 そして、きっと良くしてくれたのだろう、ステージがそれなりに良く見えるところに案内してくれた。 まだ、始まって少ししか経っていないようだった、、、


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 そもそもミュージカルなので、そのタイトル「 タンゲーラ 」に関連する形で少しはタンゴが観れるくらいなのだろうと僕は思っていた。 それ以上に、「 タンゲーラ 」とは一体誰なのか? タンゴをする人のことなのか? 誰かの名前なのか? ミュージカルそのものを良く観る必要があった。

 しかし、そのミュージカル「 タンゲーラ 」は僕の想像以上だった。 もちろん想像以上に良かったのだ。 今までの僕のタンゴに対する勝手なイメージ、「 大人の洗練された、、、 情熱の、、、 」の上を遥かに凌ぐモノだったのは間違いない。 時に情熱的で、時に繊細で、そして時に激しい彼らのタンゴは言葉にするのは難しいほどすごく良かった。 その本物の迫力に、僕は感動した。

 閉幕の時のスタンディングオベーション、他の誰にも負けないくらい拍手をしてしまった。 正直、僕はそういうことに影響されやすいと言える。 そういうこととは、自分が到底出来そうもないことをこなすことだ。 また、それをやり遂げる人々に敬意を払いたいと思うし、そして、僕を魅了してくれたその演技に、、、 と、正に言葉が尽きないほど僕は感動してしまったのだ。 



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タンゲーラの写真は officail site より拝借。




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by hitoshi280477 | 2005-01-15 09:50 | 未- Argentina
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